ヒトというのは、欲張りな生き物なのかもしれない――



拓海が無事であれば命を捧げても構わナイ…、一筋に願い続けていたけれど…。



祈りが神様に通じて、何よりも大切で愛おしいヒトとの対面を果たせたのに…。




また次の願いを追い求めてしまうのは、悲しい人間の性なのでしょうか・・・





「さ…、桜井部長から指示を受けて、今回は私が同行しておりました…。

混乱を招かせてしまい…、申し訳ありません…」


気づけば小刻みに震える声色で、深々と一礼をして取り繕っていて。




“貴方の秘書…”


あながち間違ってイナイ言葉だけれど、それは過去形の話でしかなく。



今はもう、貴方との結婚に向けて歩み始めている真っ只中だというのに。




それでも私は…、対峙する貴方の表情が怖くて仕方無かった・・・




「社長…、私の冗談がすぎたようです…。

貴方の“大切な”秘書という意味合いで、つい・・・」


「・・・っ」


私の心情を察してくれたのか、それまで黙っていた杉本さんが口を開くと。




「いや…、場を和ませようとしただけの事でしょう?

それより佐々木さん…、俺の方こそ申し訳なかったね――」


「・・・っ」


彼と私を交互に一瞥したあと、ようやくフッと一笑した拓海。