本当は菫と会ったトキ…、縋りついて泣いてしまいたかった・・・




“どうしよう拓海が…”


その言葉を皮切りに、泣き叫びたくて堪らない自分と必死で戦っていた。




だけれど伸びそうな手は拳を作って、駆け出しそうな足には踏ん張りを利かせたの。




拓海の行方が掴めないという、かつてナイほどの真っ暗に包まれている中でも。



東条の人間として、卒のない立ち振る舞いへのプレッシャーが圧し掛かるから。



言えない…、言ってはイケナイとグッと耐えていた…――





「菫ー、蘭ー、こっち!」


「わー、久しぶり!」


お洒落な和風居酒屋に到着した私たちを、サークル仲間が待ち構えていて。



スーツ等の落ち着いたスタイルの皆に、やっぱり変化は生まれていても。



それでも溶け込める此処には、何も変わらないトキが存在していた…。





「なんか蘭…、めちゃくちゃ綺麗になったね!

ようやく落ち着けるオトコでも出来た?」


「もー、そんな訳ないから!

そっちこそ、アノ彼とはどうなの…?」


「お陰様で、バッチリ順調かなー」


「良いなぁ、羨ましい…」


久しぶりに会う仲間と、他愛も無い雑談と冗談を重ねていた。