「理、沙子さん…?」


放たれた言葉を再度確認しようと、恐る恐る呼びかけた。




「今だからこそ、守るべきよ」


「え…、な、んで・・・」


しっかりとした口調で告げられれば、ますます戸惑ってしまう。



そんな不安な心が表に出たのか、ひとつ溜め息をつかれてしまった。



「それなら、蘭ちゃんは…。

拓海を理由にしてキャンセルするつもり?」


「っ――」



「東条の人間なら“それ”が齎す影響を考えて欲しいの」


「っ…、申し訳、ありません…。

行かせて頂きます…」


ハッキリと言われて、無意識に感情優先の考えをしていたコトに気づかされる。




拓海の件は極秘だというのに、私は菫に事訳を話すつもりをしていた。



何処から情報が漏れるか分からない中で、なんて愚かな考えをしたのか…。



少なからず、東条家に足を踏み入れている人間が…――




「キツい言い方をして、ゴメンなさいね。

それでも理解して欲しいの…、今は事を荒立てる時期ではないと。

もちろん動きがあれば連絡するから、ね…?」


「はい…、宜しくお願いします…」


窘めてくれた理沙子さんに一礼したものの、自身の浅薄さを嘆きたかった。