「蘭ちゃん」


「っ――!」


ひとつ呼びかけられた声は、それが事実なのだと告げるサインだった。




「信じて待ちましょう、ね…?」


「や…、だ・・・」


「蘭ちゃん、落ち着いて!」


「やだぁああ!」


こちらを捉える表情からして…、初めからすべてを物語っていたというのに。



それでも受け入れたくなくて、両手で両耳を押さえると頭を振り続けた。




「蘭ちゃん、大丈夫だから!」


「・・・っ」

パニックで狂乱する私を、ギュッと抱き寄せてくれたのは理沙子さん。



いつもの広くて温かい胸では、ナイ・・・




「たく、みっ…――!

やぁーーー!」


ジッと捉えてくれるブラウンの瞳の色も、清涼な甘い声色も。



キスマークだって、愛された痕跡だって、しなやかな指の感触だって。



先ほどまで繋がっていた愛証は、ひとつ残らず刻み込まれているのに…。



愛おしい貴方は今、何処で息づいているの――?