その儚げな表情で、以前発せられた言葉を思い出した。



“俺の気持ちは、オマエにしかない。

ギリギリのボーダーラインだ…”



切なさを含む声で紡がれたモノが、拓海のすべてだった?



疑問符を投げ掛けたくても抑えていると、フッと自嘲した彼。




「今まで蘭に見せてきた人格が、どれも俺な訳で…。

東条の名を持つ者…、東条グループ社長…、そして今の俺と…。

それらはすべて、俺に欠かせないモノなんだ。

だからその場に応じて、蘭を傷つける時があると思う。

ごめんな・・・」


「っ・・・」

あまりに苦しそうな言い方に、キューっと胸が締めつけられた。




これが拓海の琴線だという気がして・・・




「…謝らないで・・・

何があったとしても絶対に、拓海と生きていきたいの。

だから私も、一緒に頑張るからね…?」


「蘭・・・」

眼を丸くする彼に、ニコリと笑って頷いた私。




辛さと痛みで傷痕が出来ても、それは次へのステップに繋がるよね?



傷つく痛みを知ろうとも、その分もっと貴方を愛して生きたいの。




それが東条 拓海と結婚する、私なりの心持ちだから…――