勇気くんはいつの間にか上着を羽織ってドアを開けて待っててくれた。


こーゆーとこ、優しい。


「こっからどの位かかるん?」


「家まで?」


「おん」


どの位だろう…?


勇気くんはガチャリとドアの鍵をかけて、ぱっと私と目を合わせる。


「ん〜ぁ〜…40分とか?」


「ふは、何その間」


「考えてただけなんですけども!」


ふらふら〜っと勇気くんは前に進む。


何かもう、勇気くん捕まえとかなきゃ。


「どっか行っちゃいそう」


「へ?」


「ふわふわしてるから、捕まえとかなきゃなーって…」


「………」


「ちょっと、何か言ってよ?」


「手」


勇気くんは手をそっと私の前に差し出した。


「繋ぐ…?」


「……え?」


「何処にも行かへんし」


にこっと笑った勇気くんは私の迷ってる手を取ってポケットの中に入れた。


「こーすればあったかいやろー」


「……そうだね」


教師と生徒ってこと忘れてない?


いや、いっか。
今だけは忘れたい。


あったかい気持ちになるコレ、何だろう…?