「━・・っにしてんだよ離せ!!!」
━・・・・・え?
聞こえた声に、耳を疑った。
「・・・っ!!!」
その瞬間、飛んできた極厚の辞書が
明日香をつかんでいた男にあたり、
体が自由になる。
「明日香!!」
差し出された手を
思いっきり握って、走り出す。
後ろから上級生の声が聞こえる。
「・・!スピード上げんぞ!!」
力強く私を引っ張る背中に、
涙を零しながらうなずくしかできない。
「・・・・っ、ぅ~・・」
‘祐人”
心の中で、何度も呼んだ。
「っ、しつけぇな!こっちだ明日香」
角を曲がり、祐人が明日香に言った。
ウソみたい・・。
本当に、来てくれた。
夢じゃ、ない・・・・っ!!
「・・ここに隠れるぞ」
校舎から死角の物置の隙間に隠れた。
「・・っ、せま・・。平気か?明日香」
窮屈そうにつぶやいた祐人が、
まだ夢みたいで。
「・・明日香・・?」
「・・・うぅー・・っ」
私は泣きながら、祐人にしがみついた。

