「ねっ、ミュージカルどうだった?」

ミーヤが冷蔵庫から冷えた缶ビールを一本投げてくれた。


「あぁ、えー、えっと…そうだなぁ」

ミーヤの明るい声に、現実に立ち戻る。



これは、まずい。


ちゃんと返事できない。


だって、わたし、ミーヤそっちのけで、光をおってたから…。



「ごめんっ。見てなかったわけじゃないの。本当に!だけど、隣に、黒川光くんがいたんだもん。気になっちゃって。だって、あの芸能人でしょ。ね、びっくりしてさ」

しどろもどろになりながらも、早口でまくしたてるわたしの姿を見て、


「愛名って、黒川光のファンだったの?」

とミーヤは目を丸くした。



「いやいや、そうじゃなくて。あのビックスターですから。わたしみたいなペーペーは、びっくりするでしょう」

ケラケラケラ

部屋に響くミーヤの笑い声。