突然、フクちゃんの携帯音が鳴る。

今度は、光の着うたではなく、機械音。


「はい、…はい、…今ですか、新宿です。…はい、すぐ行きます。お疲れ様です」

フクちゃんの口調から、仕事の電話だとわかる。



「ごめん、愛名さん。俺、事務所から呼び出されて、今から行かなきゃなんねーの」


「うん、わかった」


「でも、ここに一人にしておけないしな…」

困ったフクちゃんの顔。



「何言ってるの、わたしなら大丈夫だよ。早く事務所に行かなきゃ。仕事の話でしょ。
わたしたちにとって、どんな仕事でも大事な一本なんだから、早く行かないと他の人に取られちゃうよ」


わたしは明るい声を出し、フクちゃんの背中を押す。