「あらら、そんなに否定されて」

「だって、親同士が決めたことだよ」

「うーん。でも、桐生君は、凄く気になるみたいだったよ。ねぇ、感じないの?」

「何が?」

「彼の愛情みたいなの。優しさとか」

「感じない」

「即答だね。でも、たまにとかじゃない、そういうのって。ふとした時とか」

「ない」

「ない?」

「全く」

「そうなんだぁ。気になるみたいだったけどなぁ。日和が嫌いに思ってるから、気がつかないんじゃない?」

「ないってば。私を見る時の目、怖いんだから」

「怖いの?」

「そう。鋭くて、偉そうで…嫌い」

「あらら」

「あの人の話は止め!」

「はい、わかりました」


私達は、下駄箱で靴を履き替えて、教室へと向かう。


「あ、そうそう。さっきから気づいてたんだけど、眼鏡、外したのね」

「うん」

「お母さんが?」

「うん」

「良かったね」

親友の絵里菜は、眼鏡の理由を知っていた。

私は、微笑んで頷いた。