落ち着きを取り戻した倉澤は、ワインを飲み始めると、突然饒舌になった。

『ねぇ 裕子。 入籍する前にさ、君の過去の彼氏の話しなんかも聞かせてよ。

裕子がどんな恋をして、どんな人を好きだったのかとか、全部知りたいんだ。

俺は、裕子の全てを含めて愛してるからさ。 』

「でも・・・」

躊躇いもあったが、直哉が自分の過去を話したのだから

裕子も話した方が、彼にとって楽になれるのかもしれない。



「そうだな・・・。初めて好きになった人はね・・・ 」

と、子に絵本を読み聞かせるように穏やかに、ゆっくりと話し始めた。

直哉が途中、楽しそうに

『へぇぇ!』 『そりゃ、別れて正解。』

なんて笑いながら巧みな相槌を入れるのが面白くて

裕子はついつい調子に乗って話し過ぎてしまった。



途中、直哉の顔色が曇ったことにも気がつかずに。