PsychoCabala〜第7の男〜

「ああ。・・・・


お前なら、何か知ってるかと思ってな。」



水谷の返しに稲葉は遠い目で
オリーブをかじった。



稲葉は紙のコースターの上へ
その食べかけのオリーブを静かに置いた。



そして、しばらくして小声で言った。



「知らねーよ。」



軽い口調だった。



「今日は楽しかったよ。」


突然、稲葉は席を立った。



「おい。もう行くのかよ」


「ああ。やっぱ俺
酒、弱くなったわ。・・・またな。」



そう言うと出口の方に向かった。



だが稲葉はもう一度水谷に振り返り、
こう言った。



「水谷・・俺、お前の事、好きだぜ。」



顔が笑っていた。



稲葉はマスターに頭を下げ店を出ていった。



その姿に水谷は違和感を感じた。