その頃、

佐和田霧子は制服を着たまま河川敷に一人座っていた。



夕暮れ時で、
西の空には沈みかけた太陽が鮮やかなオレンジ色をかもし出し、



遊んでいる子供達もそれに合わせて、
家に帰る準備を始めていた。



野球帽をかぶった小学生の集団が、
それぞれの自転車に股がった。



霧子は、自分の目の前を通過する
その子供達を見ていた。



するとある一人の少年が
霧子の前を横切ろうとして立ち止まった。



その少年は、霧子の顔を覗き込んでこう言った。



「おねえちゃん。
 泣いてるの?」



一人考え込む霧子の目からは、
涙がこぼれ落ちていた。



先に行った子供達が、その少年を呼んだ。



「おーい。早く帰ろうよー。」



それに気付いた霧子は急いで涙をぬぐい、
目の前の少年に
大丈夫と笑って見せた。




少年は暫く霧子を見ていたが、
やがてゆっくりと前を向き



「まってよー!」



と言ってその場を去って行った。