PsychoCabala〜第7の男〜

その横で孔命の胸に手をかざし、
真剣な眼差しで傷口を押さえ込んでいる少女が小さく呟いた。



「黙って。
・・・もう少しだから。」



彼女の手のひらから、
孔命の体全体に琥珀色の光が放たれた。



やがて孔命の胸から出血が治る。
彼女はホッとした表情で胸を撫で下ろした。



イナッチは
この10才位にしか見えない少女の事を知らない。



「君は?」



イナッチの問いに
少女はあどけ無い笑顔で答えた。



「私の名前は、エミ。
名字は無いわ。」



その内、孔命の顔には血色が戻り、
表情も穏やかに戻っていった。



「これをやった人。

わざと急所をはずしています・・・。

何故でしょう。

他の人達は躊躇わず殺しているのに。」



その少女の言葉に
イナッチはこれまでに無い怒りを感じた。



野郎・・・。
自分の意思で命をもて遊んでやがる。



『神』にでもなったつもりか!



イナッチは
何かを思い出したかの様に
勢い良く立ち上がった。



「孔命の事、治せるかい?」



孔命の命を救ったその少女に、優しく問いかけた。



エミは小さく頷きこう言った。



「私、『その為』に呼ばれたから。」



「そう。じゃあ、後頼んだよ。」



そう言い残すと
イナッチは、おもむろに走り出した。