PsychoCabala〜第7の男〜

数日後。



皇居の長い堀沿いに、
無造作に立てられた
雑居ビル群がある。



そのビル群の一角に
戦後間もなく建てられた古い建物があった。



その建物は
テナントビルになっており、
古ぼけたエレベーターが
一基装備されているだけだった。



観光目的に練り歩く大群衆の中、
黒いスーツを着た一人の男が
そのビルの中に入って行った。



彼はそのビルのエレベーターに乗り込むと
五階まであるボタンを無視し、
脇にある古ぼけた
煙草箱サイズほどのボックスを引き出した。



引き出したボックスの中には
小さな円筒形の窪みがあり。



彼はその窪みに
自分の右人差し指を
躊躇なく差し込んだ。



指紋承認。



そして
当時まだアナログだった携帯を
その上にある溝に重ねると、
携帯は一瞬にして
何処かへコールし出したのだった。



閉じたままの携帯が
赤いネオンを光らせ鳴り響く。



やがて
エレベーター内の灯りが
一斉に消え
室内は非常灯のオレンジ一色となった。



次に機械音を唸らせ
頭上から
グリーンの細いレーザーが
床に並行して舞い降りて来た。



男は慣れているのか
何もしないまま、
上から下へと自分の体をスキャンして行く緑色の光を
ただ見ているだけだった。



グリーンの光が
足の爪先までたどり着いた時
後ろに張り付けてある鏡が黒色に変る。



そこに
あるデジタルの文字が浮び出した。



鏡に写し出された文字。



それは



『承認・・ACE。』



と書かれた文字だった。