深夜。


…いや、もう夜明けといったほうが正しいのかもしれない。


 空がうっすらと明るくなってきて、普段はうるさくてしかたがない町が静まり返っている。


 俺はなんだかんだ言って、この時間が24時間のうちで1番好きなのかもしれない。


 季節なんて関係なく寒いし、この時間に起きようと思ったら嫌でも寝不足なんだけど、なんだろう。


 このなんとも言えない孤独感が寂しいようで、心地いいんだ。


 寝間着代わりのジャージに白いTシャツの上からパーカーを着て、ベランダに出る。


 「~っ、さみぃ。」


 タバコに火を点けて、寝起きの肺を黒く染め上げるかのように一気に煙を吸う。


 吐き出される紫煙は朝の冷たい風に流されていった。


 ピピピピピ…


 突然鳴り出した、曲設定も何もしていない携帯。


 開いてみると、なんとも懐かしい名前が映っていた。


 この名前を見るのは何年ぶりだろう。


 かつては親友だった奴の名前。