だけど、感覚で物を言うならば、俺にとってその30分は1時間にも2時間にも感じられた。
あいつにとっても同じだっただろうか?
俺はこの電話をするために物凄く勇気が必要だった。
啓輔、お前はこの電話を何の躊躇もなく取れただろうか?
いゃ、あいつのことだ。
きっと俺なんかよりも、電話に出ることに戸惑ったはずだ。
そうに決まってる。
あいつは、俺が思っているよりもずっと自分を追い詰めることが得意だから。
そんなことに俺が気付いているなんて、本人はこれっぽっちも思っちゃいないだろうが。
「……祐一?もう、起きてるの?」
革張りのソファに体をあずけ、目には見えない空気を凝視していると、背後から可愛らしい声が聞こえた。
「あぁ、柚華。やけに起きるのが早いじゃないか。」
今の俺の彼女であり、前の啓輔のかけがえのない存在。
……いゃ、啓輔にとっては今でもか。
起きたばかりで寝ぼけているのか、乱れた髪を手ぐしで直しながらボーっと突っ立っている。
「…柚華。おいで?」
