「あぁ、それとも貴女は死にたいのかしら?」

ニッコリと効果音が聞こえてきそうなほどの満面の笑みを浮かべ、ユキは手にする鎌の切っ先を彼女に向ける。それは、答えなければ本気で殺すというユキの強い意思が込められていた。

そして、ユキのその瞳はどこまでも暗く、冷たく、人を恐怖させるような何かを持っていた。

「あ…や……っアンタなんか、アンタなんか死ねば良いのよ‼梓の邪魔をする奴は‥梓を除け者にする奴なんて、許さない‼」

感情を剥き出しにしたその叫び声と共に、化物がユキに向かって襲いかかった。

考え無しに我武者羅に突っ込んできたそれをユキは横に受け流すと、止まらずに勢いよく通り過ぎていく化物の胴体に鎌の柄を叩き込んだ。本体と同様で痛みによって動きが鈍ったそれを、彼女は容赦無しにそのまま柄を振るい投げ飛ばした。

華奢なその体つきから考えられないような力技に、俺は唖然とした。ユキは人間ではない、そのことを今改めて思い知らされた。

「どうしたの、私を殺すんでしょ?なら、休んでないでとっととかかって来なさい‼」

痛みに悶え苦しむ峪下を、ユキは哀れむでもなく挑発した。