Othello―オセロゲーム―Game

「そうよ。」
突然、カヤの背後で透き通った綺麗な声が聞こえた。
振り替えると、そこには茶色の長髪を一括りにした若い女性が立っていた。
おっとりとした優しい笑顔が、なんだか和む。
「お帰りなさい、ひーちゃん。」
カヤの目が裂けんばかりに見開かれた。
「ひーちゃんッ!?」
そして、忙しく女性と若松を交互に見比べた。
若松は、罰が悪そうに顔を伏せている。
一方の女性の方は、そんなことはお構いなしに、しゃがみこんで手を叩きモモを呼んだ。
ピンと耳を立てて顔をあげたモモは、若松の懐から抜け出すと女性の傍まで歩み寄った。
「ごめんなさい。モモが吠えて驚かせちゃったわね
この子、野良犬だったからちょっと気性が荒くって…。
私とひーちゃんにしか懐いてないのよ。」
女性は、申しわけなさそうに、言いながらモモを優しく叱った。
「あ…いえいいんです!あの…それより、あなたがオーナーさんですか?」
カヤは右手を左右に振りながら、恐る恐る彼女に尋ねた。
カヤの問いに、彼女は優しく微笑んだ。
「えぇ、私が“紅葉館”のオーナー、荻堂秋葉(おぎどう あきは)。初めまして、可愛いお嬢さん。」

「は…はじめまして!!アタシ、九条カヤっていいます!今回は父の代理できました。」
何故か緊張して、少々吃ってしまった。
若松が後ろで吹き出していた。
「まぁ…!九条さんとこの?わざわざ遠方からありがとう。疲れたでしょうから、ゆっくりしてってね!

ようこそ、“紅葉館”へ!!」