何はともあれ、無事辿り着いた2人は、息を切らしながら目の前にそびえる不気味な館を見上げた。
「こ…ここが、“紅葉館”?何か…まるで…幽霊…屋敷…。」
カヤが途切れ途切れに話はじめた。
さすがの若松も、呼吸を整えるのに必死で頷くことしかできなかった。
その様子をみて心配したカヤは、
「だ…大丈夫ですか?若…松…さん。」
と声をかけた。


てめぇのせいだろぅが…

いっそ怒鳴ってやろうかと思ったが、思う通り声がだせないため断念した。
せめてもの抵抗で、睨み付けてみたがまったく効果はなかった…。

仕方ないので諦めて「大丈夫」と片手を軽くあげることにした。
呼吸が落ち着いたカヤは、その様子をみて満面の笑みを若松にむけた。
一方の若松は、ガックリと肩を落とし、今だに呼吸が整わないまま重々しい館の扉を押し開けた…。