「本当にいい?これが最後だよ」

店主が言う。

バリカンの音に動揺し、いよいよ坊主になるという不安から、俺は迷った。

本当に坊主にするのか。

みんなに笑われはしないか。

だが、ここまできて後には引けない。

ここで、

「やっぱりやめときます」

なんて言えるはずがない」

「大丈夫です。お願いします」

俺は店長にはっきりそう言った。

バリカンが俺の頭に入る。

ビイイイイイイイイ。

髪の毛が駆り落とされていく。

どっさりとした髪の毛の束が落ちる。

徐々に頭の形が変り、頭皮が見えていく。

もう坊主にするしかない。

前、後ろ、横、まんべんなく全部にバリカンが当てられる。

山のような髪の毛の束。

バリカンが頭皮に当たる感触が気持ちいい。

鏡に写る自分を見る。

俺は間違ってないだろうか。