店主がバリカンを取り出す。

生々しい、強力そうなバリカンだ。

「何ミリにする?」

「えっ」

よく分からない質問だった。

「坊主にも長さがあるんだよ。一番短いのは0・5ミリ、そこから1ミリ、3ミリ、5ミリ、9ミリ、12ミリって感じかな。初めてなら12ミリがいいんじゃない?それでもかなり短い坊主だから」

「じゃあそれでお願いします」

なぜもっと短い坊主にしようとしなかったのか。

やはり不安だった。

まるでハゲているようなスキンヘッドみたいになるのが怖かった。

俺は臆病なのだ。

何にしても。

臆病だからいじめられたし、不良になった。

そう思う。

店主がバリカンのスイッチを入れる。

ビイイイイイイ。

もの凄くでかいバリカンの音が響き渡る。

その音は心地良く快感な音でもあった。