俺様執事に全てを奪われて

「涙は出ていない」

わたしは布団の中で叫んだ

泣くなんて一言も言ってないだろ

…て泣いていいなら、すぐにでも泣けるぞ?

「あれ? そうだっけ?
さっきなんて言ってたっけ?
愛し過ぎちゃって、元さんに抱きつきたいだっけ?」

「違うだろっ!
今の元は嫌いだ、と言ったんだ
わたしの気持ちを全く理解してくれない
わたしの行動をわかってくれない
だから嫌いだ
…嫌いなはずなのに、好きなんだ
むかついても苛々しても、やっぱり元が好きなんだ」

布団の中から、飛び出してわたしは怒鳴った


愛子が携帯を乙葉さんに向けたまま、ニヤリとほほ笑む

こ…これって

『須山 元』
『通話中』

という文字が、わたしの眼前を支配している

聞かれた…よな?

絶対に、元に聞かれてるよな?

なんだ通話中のままんだんだよ

切れよ、元

わたしが電話に出たくないって、この会話を聞いていればわかるだろっ

「あぁいぃこぉ…」

「何?」

愛子が涼しい顔をして、にこにこと笑っている

「これって通話中じゃないかっ!」

「あれ? そうだねえ…
もっしもーし、聞こえてますぅ?」

愛子が携帯を耳につけると、わざとらしい声をあげた

「あら? 何も聞こえないよ
誰も聞いてないみたい
ほら、乙葉さんも『もしもし』って言ってごらんよ
何も聞こえないよ?」

愛子が、携帯をわたしの耳にあててくれる