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社長室に入ると柑橘の香りがした。


「これ、新作の?」


もう嫌というほど嗅いできたその香り。

なぜ社長室に?と思いながらもデスクに向かった。




…なるほどな。


イスに座ってすぐ目にしたもの。

ソファに丸くなって眠る愛莉と、机の上に置かれている香水の瓶。
滑り落ちてしまっている数枚の紙と傍らにあるスケッチブック。



それを見たら彼女が何をしていたかなんてすぐに分かる。


「ありがとうな」

近づいていき頭を撫でた。
少し身じろぎをしたものの起きる気配はない。





愛莉の参加する会議まであと1時間。
もう少しいいか。

俺は上着をぬいで愛莉にかけ頬に軽く口づけて、デスクで仕事を始めた。