「…だから早く、行ってください。
もう、追っ手がすぐそこまで来ています。
俺は覚悟を決めたんです。
…美鈴を守るって。」
「…………わかった。
……すまない。」
お菊殿は何か言いたそうな顔をしていたが、佐久助殿にひっぱられて…
やがて見えなくなった。
尚太郎は私のそばに来て、
転んで泥だらけになった私の手を握った。
立てる?と、聞いたところに
追っ手が現れた。
「いたぞっ!捕まえろ!!」
「待て!
あいつらよりも佐久助とお菊だ!
早くしねぇと逃げられちまう!!」
「そうはさせない。」
尚太郎は、追っ手に向き合うと
両手を広げて追っ手の行く手を阻んだ。
「なんだお前!
これ以上罪を増やすつもりか!?」
「……あなたたちは間違っています。
誰かを犠牲にしてまで村を救おうだなんて!!」
「馬鹿かお前は!
一人の命と村人全員の命!
どっちが重いかわからないのか!?
いいからそこをどけ!!」
「嫌です!!」
しかし大人の男の力には叶わず、
尚太郎はぬかるんだ地面に倒され、
自由を奪われてしまった。
その脇を何人かが走って通り過ぎて行った。
「やめてっ!!」
私は尚太郎を助けようとしたが、
逆に捕まえられてしまい、身動きが取れなくなった。