もう、誰も信じられない。信じたくない。
そんなふうに頑なに心を閉ざし、上辺だけで過ぎてゆく世界を見ていた。上辺だけで。見たくないモノは、見ないで。聞きたくないモノは、聞かないで。私の周りで起こってること、私の周りの景色、全てのモノに、目耳を塞いで。今まで私は、ずっとそうして生きてきた。ずっとずっと。
そんな自らの存在意義を見出だせない私の心を揺れ動かしたモノ。
それは先輩達のダンスと閖亜先輩の心からの笑顔だった。私にはない、「心からの笑顔」と「自分の『存在意義』を知り尽くしたとでも言いたげな瞳」を持つ、閖亜先輩の笑顔。閖亜先輩はダンス部の部員で仕草はもちろん、存在自体が可愛い先輩。
「私、ダンス部に入ります!!」
最初は吹奏楽に目をつけていた。けれど、趣味としては未だ叩けるドラムも、楽曲として叩くのはちょっとまだ躊躇うところがある。私は竜矢を死なせてしまった。竜矢から彼の大好きだった世界を奪った。私にとってはこのうえない罪なのに、他人は「落ち込みすぎだよ、仄佳ちゃんのせいじゃないでしよ~。」と明るく話しかけてくる。
そして吹奏楽に、ドラムに誘う。甘い声で、「叩いて」って頼む。
他人は何にも分かっちゃいない。
「悲劇のヒロインは、ドラムのイスには座れない」と。
「悲劇のヒロインは、スティックを握ってはいけない」と。
「悲劇のヒロインは、夢を見ちゃいけない」と。
知ってはいるのかもしれないけど、他人はあえて無視している。
「仄佳ちゃん、入ってくれるって~。」
「わぁ~い。」
3年生の部員から声があがる。その中でも特に閖亜先輩という、ダンス部の部員で、仕草はもちろん、存在自体が可愛い先輩さんのテンションが凄かったのは置いておくけれど・・・。でもやっぱり新入部員は一人でも多い方が嬉しい。誰だってそう思う筈。私だって中学二年生、中学三年生のときは、ひとりでも多くの人が、自分のパートに入って欲しくて、部活動仮入部期間中、ずっとドラムを叩いていた。だけど、「私」のような『生きる希望を持ってない子』の存在を欲しがる人はいない。暗い過去のために、偽った明るさしか出せない私を、心から笑えない私を、欲しがる部は無いのだと、今までそう思っていた。
思っていたのにー。