禁断のドラムヴィーナス

カメラをクラスメイトに渡して、事実上中学校生活最後の閖佳との2ショット写真を撮る。高校は違うからなかなか会えなくなるだろう。それでも、良い。良いんだ。私の親友は、高校に入っても、大人になっても、ずっと変わらず閖佳だけなのだから。閖佳のことを、信じているから。閖佳のことが、大好きだから。
「仄佳。」
卒業式後、校門の前で閖佳に呼ばれた。
「今度会う時は、お互い幸せだと良いね!!それじゃ、またね!!」
去っていった彼女の後ろに、桜が舞い散る。まるで閖佳の出発を、祝福しているかのようにー。

「そんなことあった?ってかまぁーだ竜矢くん引きずっとんの?それじゃ彼氏とか望めないね。仄佳に格好良い男性、紹介してあげようと思ったのに。」
「…私は面食いじゃねぇ!それに、閖佳と男の好み違うし。っかひっどぉーい。私だっていつか竜矢みたいな人と付き合って結婚するんだもん!幸せになるんだもん!」
一通り閖佳が好きな人を語った後、私たちは昔の話をした。埃をかぶった中学の卒業アルバムのページをぱらぱら捲りながら。
「…。」
ぽかっと力なく閖佳の頭を叩く。ドラムは叩けるようになったけど、まだ竜矢のことは引きずってる。初恋…だったから。初めて付き合った男性だったから。
「ごめん、ごめん。ってか文化祭きてね。白皇も行くから。」
文化祭のチラシを見せて、笑う閖佳。閖佳の持つプリントにはドでかく『山里高校文化祭』の文字が貼りつけられていた。
「閖佳、菜穂は何組?」
確か菜穂と閖佳は同じ学校だった筈。
「え?菜穂ちゃんって山里なの?」
同じ学校ってことも閖佳は理解していなかった(…オイ)。せめて同じ学校の子くらい覚えとけよ!と思う。だけど閖佳から山里高校の人のグチを聞いたことはないので、きっと山里は楽しいんだと思う。幸せ、なんだね。
「仄佳、今幸せ?」
ふいに閖佳が聞いてきた。幸せかどうなのかと聞かれると、確実に幸せではないと思う。私の隣に、竜矢はもういないのだから。もう、どんなに祈っても、竜矢は私の隣に戻ってはこないから。
「そっかぁ…。」
悲しそうな目で見てくる閖佳。頼む、閖佳。そんな蔑むような目でこっちを見ないで。そういうことされると対処の仕方に困る(現在進行形で困ってる)。