「ってことでねー仄佳、閖佳を助けてよぉ~。閖佳アピール苦手で。」
「…嘘つき。」
夏も過ぎ、紅葉が色付き始めた早秋の頃。街で久々に会ったのは、中学時代からの親友福田閖佳だった。彼女はものすごく大人っぽくなっていて中学の頃の面影が全然無かった。中学の頃はよく恋愛トークや将来のことについての話に花を咲かせた記憶がある。さらにもうひとつ。閖佳は私に相談したいことや、協力して欲しいことがあると、中学の頃からいつも必ずおやつで釣る癖がある。それにまんまと引っ掛かるのは、その頃からの私の悪い癖。
「だー。仄佳ぁ。おやつ奢るからお願い!!」
「良いわ。」
閖佳は胸の前でかわいらしく手を合わせていた。私は今回もまた、おやつに釣られた。閖佳の手口は分かっている筈なのに(学習しろよ)。それにしても閖佳は良いなぁ。私は竜矢の事があるから付き合おう、とか思えない(むしろ男を生物と認めたくない)のに、別れた経験のある閖佳はいつでも明るく物事を考えていて。今もこうして誰かに恋して、誰かを、誰かの温もりを求めている。私は竜矢以外、欲しいものなんてないのに、全然前に進めてない。前なんて全然見えてないのに。
「…でどんな方なの?閖佳様。」
立ち話しもアレなので、とりあえず落ち着ける場所に向かって歩き出す。竜矢が死んでからは「恋愛なんてどうせ地獄を見るだけで良いことなんてないよ…。痛いめ見るだけで、哀しみや儚さを学ぶだけ。『愛は永遠』なんて、綺麗な言葉でみんなはそれを表現しようとするけど、あれは地獄でしかない。永遠なんて、絶対無い。絶対も、無い。どうして、みんなは愛の温もりばかりを、求めるのだろう。手に入れたとしても、いずれ全て失うのに。最後に深い哀しみを味わうだけなのに。」と、どうしても思ってしまう(他の考え方が出来ない)私に、閖佳に恋のアドバイスなんて、出来るのだろうか。そう思う気持ちは無いって言ったら嘘になるけれど、それより少しでも、いつも一人で抱え込んでしまう閖佳の力になってあげたかった。私は、閖佳が大好きだから。それだけは、その気持ちだけは、誰にも負けない自信がある。私よりも、閖佳のことを想えるのは、きっと未来の閖佳の結婚相手くらいなもんだろう(すげぇ自信…)。
「え…、聞いてくれんの、仄佳。」
「うん。で、どんな方なの?」