『ィタッ…』

身体はぶつからなかったのだが

髪が男の人の着ていたジャージのファスナーに

引っかかってしまった。


前にもこんなことがあったような。


男の人も髪が引っかかっている事に直ぐに気が付き

私の方に近寄ってくる。

そして、

『南……沢?』

「へ?」

私は名前を呼ばれ顔を上げる。

その髪が引っかかった相手は怜くんだったのだ。

「怜…くん…」

「ちょっと待っとけ。直ぐ解いてやるから。」

そう言って器用でもなさそうな手で

一生懸命私の引っかかった髪を解く。

「ん」

「あ…ありがと。」

私は怜くんの方を向いていたが

くるりと回って家に帰ろうとした。