「あれ?光姫ちゃん?」


「やっとお目覚めですか?」


藤堂さんの身体に倒れこんだままそう聞くと、藤堂さんが首を傾げた。


「オレ、襲われてる?」


「そんなわけないじゃないですか!!」


自分からあたしを(他の女と間違えて)引き寄せておいて!


「はは、そうだよねー」


相変わらずあたしと話す時は語尾を少しのばし目に話す藤堂さん。


なんだか本当にこの人だけは憎めなくて溜め息をはいた時。



「何やってんだ、お前ら」


ものすごく負のオーラを纏った声があたしの背中に突き刺さる。


「ゆ、悠河」


変な冷や汗がタラタラと流れてくる。


それなのに藤堂さんは何も気にすることなく「よっ!悠河」なんて爽やかに笑っている。


悠河がそんなあたしたちに一歩、一歩と、地面を震わせながら近づいてきた。


「ゆ、悠河!これはね?あのね、違うの!浮気とか、ほんとそんなんじゃないから!」


「オレは光姫ちゃんとなら不倫してもいいけどな」


「藤堂さん!?」


余計に話をややこしくするのがこの人の特技なんだろうか。


あわあわしていると、悠河にひょいっと身体を持ち上げられた。


「え……」


それはまるで、小さな子供のように。