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「なんであんなこと言ったんだ」
「……」
“どんな罰でも受ける”
そう宣言したあたしをジッとしばらく見つめた後、会長は秘書と一緒に何も言わず社長室を後にした。
社長室の扉が閉まった瞬間、悠河の胸に抱き寄せられたあたし。
悠河もよっぽど緊張していたんだと思う。
悠河の心臓の音がとても大きく耳に響いたから。
「あの会長のことだ。何を言い出すか分からないんだぞ」
「……そうかもね」
最悪の場合、離婚……なんてこと、あるのかな?
あたしの気持ちを読み取った悠河が、静かに囁くように言う。
「一緒に……どこか遠いところに逃げるか?」
もしも本当にそうできたなら、どんなに素敵だろう。
だけどそんなこと……できるわけない。
会長はああ言ってはいても、たった一人の孫である悠河をとても可愛がっているから。
それにやっぱり、悠河ほど切れ者で、業績を落とすことなく会社を切り盛りできる人物は他にいない。
「悠河は……ここに必要な人だから」
悠河が“一緒に”って言ってくれたことはとても嬉しいけれど。
「どういう意味だ」
少し怒ったような声をして、悠河はあたしの顔を持ち上げた。

