会長が怒るのも当たり前のこと。
曾孫の誕生を、ずっと心待ちにしていたはずだから。
それが、悠河の有栖川グループ相続の絶対条件だったほどに……。
だけど、何不自由ない生活を自ら放棄したのは、紛れもないあたしなんだ。
もしも会長の言う通り、秘書の仕事も辞めて、家事一切を放棄していたとしても、あたしは何も変わらなかったんじゃないかと思う。
自由がきっと苦しくなっていた。
自由が大きなプレッシャーに変わって、あたしの心を押しつぶしていたと思う。
だけど会長にそんなこと言えるはずもなかった。
「光姫さん、キミは悠河に、有栖川を継いでほしくはないのか?」
「そんな!!私は悠河に、有栖川の未来を任せて頂きたいといつも思っています」
「じゃあ、なぜ身体に無理をさせた」
「無理なんか……してません」
「じゃあ、なぜ流産なんかしたんだ」
冷たい視線と冷たい言葉が、容赦なくあたしの全身に降り注ぐ。
『なぜ』と言われて説明できれば、いつまでもこんなに苦しまない。
だけどやっぱり、あたしが悪いんだ……。
こんなに責められたのは初めてで、身体の震えが止まらなくなった。

