旦那様は社長 *②巻*


『会長に、美姫の存在を知られてしまった』


美姫のお墓参りで、悠河にそう告げられた。


美姫が有栖川家のお墓に入った以上、いつまでも知られないわけがなかった。


覚悟はできていたつもりだった。


だけど、まさかこんなにすぐに現実になるとは思っていなくて、あたしはさっきから顔を上げられないでいる。


「どういうことか説明してもらおうか」


少し威圧的にも感じる低い声。

怖くて怖くて仕方なくて、膝の上でギューッと握りこぶしを作った。


「なぜこんな大事なことを本家に報告しなかった」


「会長、ですからそれは……」


「言い訳など聞きたくない。光姫さんの懐妊を本家に秘密にする理由がどこにある!!」


会長がバンッとテーブルを叩きつけたせいで、お茶が揺れてこぼれた。


完全に会長の逆鱗に触れてしまっている。


怒りの矛先は、今度はあたしに向けられた。


「光姫さん」

「はい」

「本家にきちんと報告していれば、こんな最悪な結末を迎えることはなかったんじゃないか」

「それは……」

「懐妊を知っていれば、いつまでも悠河の秘書なんかさせなかった。生活だって、本家で面倒を見ることだってできた。光姫さんには子供のことだけを考えてもらっていれば、こんなことには……ッ!!」


バンッと大きな音を立てて、もう一度会長がテーブルを叩く。


今は何も言わない方がいい。


そう思ったあたしと悠河は、手を繋いで静かに耐えた。