美姫は有栖川家の立派なお墓で眠っていた。
頻繁に手入れされているようでキレイに磨かれていて、花もまるでたった今活けられたように、美しく咲き誇っている。
そして、お線香の横に置かれていた白い小さなテディベアのぬいぐるみ。
お腹のあたりに『MIKI』と刺繍されていた。
「これ、悠河が?」
苦笑して何も言わなかった悠河だけど、その表情だけで全てを読み取れる。
美姫が少しでも寂しくないように、キレイな花でいっぱいにして、こんな可愛いぬいぐるみまで……。
ここで涙は見せないって決めていたのに、色んな想いがこみ上げて涙が零れ落ちた。
「美姫、寂しくないね。パパのおかげで」
美姫の笑顔が見える。
あたしたちを包む穏やかで優しくて、暖かい空気。
きっと今、天使みたいな笑顔をしてあたしたちの側にいる美姫。
やっと親子3人で会えた。
「いつも会いにきてくれてありがとう。……ママはもう、大丈夫だから」
そう美姫に伝えると、サーッと強い風があたしたちの前を通り抜けた。
「行ったみたいだな、美姫」
「……そうだね」
美姫がやっと空に帰れた日。
なんだか本当に美姫がいなくなってしまったような気がして、胸がキューッと痛んだ。
だけど今日は、同時に美姫が本当の笑顔になれた日。
娘の幸せそうな顔が頭に浮かんで、少しだけ心が温かさで満たされた気がした。

