旦那様は社長 *②巻*


美姫は有栖川家の立派なお墓で眠っていた。


頻繁に手入れされているようでキレイに磨かれていて、花もまるでたった今活けられたように、美しく咲き誇っている。


そして、お線香の横に置かれていた白い小さなテディベアのぬいぐるみ。

お腹のあたりに『MIKI』と刺繍されていた。


「これ、悠河が?」


苦笑して何も言わなかった悠河だけど、その表情だけで全てを読み取れる。


美姫が少しでも寂しくないように、キレイな花でいっぱいにして、こんな可愛いぬいぐるみまで……。


ここで涙は見せないって決めていたのに、色んな想いがこみ上げて涙が零れ落ちた。


「美姫、寂しくないね。パパのおかげで」


美姫の笑顔が見える。

あたしたちを包む穏やかで優しくて、暖かい空気。


きっと今、天使みたいな笑顔をしてあたしたちの側にいる美姫。


やっと親子3人で会えた。


「いつも会いにきてくれてありがとう。……ママはもう、大丈夫だから」


そう美姫に伝えると、サーッと強い風があたしたちの前を通り抜けた。


「行ったみたいだな、美姫」

「……そうだね」


美姫がやっと空に帰れた日。

なんだか本当に美姫がいなくなってしまったような気がして、胸がキューッと痛んだ。


だけど今日は、同時に美姫が本当の笑顔になれた日。


娘の幸せそうな顔が頭に浮かんで、少しだけ心が温かさで満たされた気がした。