「美姫のお墓、……あたし一度も行ってないから」
ずっと1人で美姫のお墓へ悠河が行っていたことは気付いていた。
時々、フラリといなくなっていつの間にか帰ってくることがある。
ジャケットを受け取る時に微かに香ったお線香の匂い。
美姫に会いに行っていたんだと、すぐに分かった。
あたしには決して言わなかった悠河。
言えなかった悠河。
そう仕向けたのはあたし。
きっと、美姫はあたしと悠河の2人を待ってくれてる。
いつも夢の中であたしに会いに来てくれる美姫だけど、もうあたしは大丈夫だって、心配ないからって、そう言ってあげたい。
悠河はあたしの髪を撫でながら少し不安げに言った。
「大丈夫なのか?」
「うん」
「無理……してるなら……」
悠河の手をギュッと握って首を振り、笑顔で正直な気持ちを伝えた。
「美姫に会いたいの」

