旦那様は社長 *②巻*


ーー敬吾。


直接彼の口から聞いたわけじゃないけれど、あたしの前に現れたことが、今回の悲しい結果を引き起こす原因になったのだと、彼もまた自分を責めているそうだ。


『あんな酷い別れ方をしておいて、また会いたい……なんて願ったりしたから、こんなことに……。オレはいつだって、光姫を不幸にすることしかできない運命なのかもしれない』


そう、藤堂さんに話したのだと。


そんなことない……。

あたしは不幸なんかじゃない。


だってあたしは、こんなにもたくさんの人に愛されているのだから。


そして、あたしと悠河の赤ちゃんも。


あたしたちの赤ちゃんが、あたしのお腹の中で確かに生きていたことを、ほとんどの人が知らない。


あたしと悠河、藤堂さんと敬吾だけが知る事実。


たった数週間しか生きられず、誰も知ることなくたった一人で空へ帰ってしまった赤ちゃん。


……美姫。


その名前も、あたしたち以外誰も知らない。


それをあたしは可哀相だと思っていたけれど、それは間違いだって気づいた。


気づかせてくれた。