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「光姫、どうかしたか?」
「え……?」
振り向くと、心配そうにあたしを見つめる悠河が立っていた。
「電気も点けずに……何かあったのか?」
「ううん、何でもない。お帰りなさい」
ニッコリ微笑んで、悠河の側へ歩み寄った。
いつものように、ジャケットとネクタイ、かばんを受け取って寝室へ運ぼうとすると、腕を掴まれる。
「え?何?」
「何かあったんだろ。様子が変だぞ」
真っ直ぐ見つめられると、後ろめたさで目を逸らしたくなった。
今日藤堂さんから聞いた話は、あたしの中だけに収めておきたい。
「身体の具合……よくないのか?」
もう片方の手であたしのおでこに手を当てて、首をひねる悠河。
「熱はないようだな」
「大丈夫。なんでもないから」
「なんでもなくないだろ。ちゃんと話せよ」
「ホントに何も……」
「光姫」
グイッと顎を持ち上げられた。
「何を考えていた?」

