旦那様は社長 *②巻*


「光姫ちゃん……ちょっといい?」


それはあたしが職場復帰して3日が経った頃のことだった。


悠河が役員会に出席して社長室を不在にしていた時、いつもとはどこか様子の違う藤堂さんに呼ばれた。


「どうかしましたか?」

「ん?あー……体調、平気?」

「はい。こうして座ってれば大丈夫です」

「そっか……」


いつもと違って歯切れが悪すぎる。

何かある、そう思った。


「悠河に聞かれちゃ困る話ですか?」


そう聞いたあたしに、藤堂さんは苦笑いを浮かべながら、誰もいない社長室を指さした。


その後ろ姿を見つめながら思ったのは、悠河の立場が危うくなってしまったんじゃないかということ。


しばらくの間、会社よりもあたしの側にいることを優先してくれていたから。


これを機に、悠河を社長の座から引きずりおろそうとする動きでもあったんだろうか……。