旦那様は社長 *②巻*


社長専用エレベーターに乗り込むと、藤堂さんがもう一度あたしに言った。


「光姫ちゃんが公私混同したくないって気持ちは立派だと思うけど、弱っている時くらい、悠河に甘えてやってよ。それで悠河の能率も更にアップするから」


「どういう意味だ、それは」


「お前に言ってねぇよ。……光姫ちゃん、さっきも社員の顔見たろ?光姫ちゃんと悠河が夫婦だってことは、今はもう周知の事実。だけど──」


「何ですか?」


藤堂さんの顔が少し曇って、何かよくないことを聞かされる、そんなことを直感的に感じた。


「今だから言えるけど……、悠河と光姫ちゃんの結婚を疑問視してる声が、社内であったみたいなんだ」


それは、あたしが悠河の妻として相応しくないということ……?


確かにあたしは名家の家柄じゃないし、地位も名声もないただの女。


相応しくない……

と言われれば、そうかもしれない。


本来であれば、あたしと悠河が結ばれることなんてなかった。


会長に見初められなければ、悠河は取引先の社長令嬢と結婚して、あたしたちは別々の道を歩んでいたかもしれない。


今となってはそんなこと、考えられないけれど……。