旦那様は社長 *②巻*


社内に入るとすぐに、この光景を目にした社員たちが目を見開いて驚いていた。


やっぱり……

社長である悠河に抱かれて出社するなんて、大きな間違いだ……。


そう自己嫌悪に陥っていると、

「え……」

すぐに社員たちの表情が柔い笑顔に変わった。


気のせい?

いつもこのエントランスに漂う張りつめた空気が、払拭された気がする。


受付の女の子2人が、顔を少し赤らめながら、チラチラこちらを見て楽しそうに話していた。


「ねぇ、光姫ちゃん。自分の働いている会社の社長がイケメンで、仕事もキレモノで、その上愛妻家だって知ったらさ、なんか嬉しくならない?」


突然藤堂さんがあたしの顔を覗きこむ。


「お前がオレを誉めたことなんて、今まであったか?」


「いつだってオレはお前を認めてるだろ。ただ言いたくないだけで」


「言えよ、ちゃんとそういう重要なことは」


「なんだお前。今さらオレに誉められたいわけ?」


あーだこーだと、いつものように言い合いを始めた2人を見て、少し懐かしい気持ちを思い出した。


まだそんなに日は経っていないのに、色んなことがあったせいで、遠い過去のように思える。