旦那様は社長 *②巻*


静かに扉が閉められた瞬間、身体が勝手に反応した。


「そのまま寝ていろ」

「……ッ」


たった数時間会わなかっただけなのに、もう何日も会っていなかったような気分になる。


とても会いたかった人。

今すぐ抱きしめてほしかった人。

今すぐ抱きしめてあげたかった人。


今のあたしの、全ての人。


「ごめんなさい……」


言いたい言葉はコレじゃないのに。

涙が止まらなくて、呼吸が苦しい……。


だけどその腕に抱かれた瞬間、大好きな香りに包まれた瞬間、溢れだしたのはたった1つの言葉。


「愛してる」


どんどん近づく、2人の距離。


「愛してる……悠河」


いつものように『オレも』と言ってくれなかったけれど、ちゃんとあたしの中に届いた。


いつも広くて逞しい背中が、震えながらあたしに伝えてくれた。


どれだけ悠河が、今あたしを必要としているかということを。


「やっと見えた。……悠河の気持ち」


抱きしめられているのはあたしのはずなのに、なんだか今は、あたしが悠河を抱きしめているみたいだ。



だって……



「やっと泣いた……悠河が……あたしの前で──」