──♪♪
玄関のチャイムが鳴り、誰かの訪問を告げる。
一條社長はフッと小さく笑って立ち上がった。
「さすが、早いな」
「誰?」
「今日本中で、一番命がけで人探ししてる人」
「え……」
あたしと美海さんは顔を見合わせるけれど、お互いその言葉の意味を理解できていなかった。
「すぐ分かるよ」
クスッと微笑んだ一條社長は、そのまま美海さんの手をとり、入り口へ向かう。
「か、海里?」
心配そうにあたしを振り返る美海さん。
一條社長がドアを開けた瞬間、ドアの向こうに黒い影が見えた。
「あ……」
美海さんの声が聞こえたけれど、あたしからはドアに隠れて、誰が来たのか確認できない。
そのうち、笑顔の一條社長と美海さんと目が合った。
美海さんはなぜか少し泣いているようで、人指し指で目尻を拭った後、満面の笑みをあたしに向けた。
そして口パクで
「よかった」
と、そう言った気がする。
その言葉の意味をやっと理解できたのは、それからすぐのことだった。
「……ッ!!」
カツンカツンと大理石の床に響く、聞き慣れた靴の音。

