旦那様は社長 *②巻*


──♪♪


玄関のチャイムが鳴り、誰かの訪問を告げる。


一條社長はフッと小さく笑って立ち上がった。


「さすが、早いな」

「誰?」

「今日本中で、一番命がけで人探ししてる人」

「え……」


あたしと美海さんは顔を見合わせるけれど、お互いその言葉の意味を理解できていなかった。


「すぐ分かるよ」


クスッと微笑んだ一條社長は、そのまま美海さんの手をとり、入り口へ向かう。


「か、海里?」


心配そうにあたしを振り返る美海さん。


一條社長がドアを開けた瞬間、ドアの向こうに黒い影が見えた。


「あ……」


美海さんの声が聞こえたけれど、あたしからはドアに隠れて、誰が来たのか確認できない。


そのうち、笑顔の一條社長と美海さんと目が合った。


美海さんはなぜか少し泣いているようで、人指し指で目尻を拭った後、満面の笑みをあたしに向けた。


そして口パクで

「よかった」

と、そう言った気がする。


その言葉の意味をやっと理解できたのは、それからすぐのことだった。


「……ッ!!」


カツンカツンと大理石の床に響く、聞き慣れた靴の音。