ゆっくりと近づいてきた一條社長は、ベッドに座るあたしの側で腰をおろした。
そして、あたしの身体を支える美海さんの頭を愛おしそうに撫でながら言った。
「男は……」
「え?」
「男は守るものができて初めて強くなる。守りたいものがあるから、強くなる」
「社長……」
「もしも愛する人が泣くなら、悲しみが消えるまで泣かせてやりたい……オレの胸で。だからオレは、涙は見せない。
もしも愛する人が苦しんでいるなら、代わりに全てを背負いたい。悲しみを忘れさせるくらいの幸せをあげたい。
男の考えてることってさ、そういうもんなんだよ。男は、大切な人にいつだって頼られたいと思う。だから弱い自分は見せたくない。
それは光姫さんのせいでもなんでもないんだ。ただの男のエゴだから」
一條社長は美海さんとあたしの涙を指で拭い、最後にもう一言付け加えた。
「だけど覚えておいて。男は、本当はとても弱いんだってこと。悠河さんを強くしているのは……光姫さんなんだってこと」
あたしが……?
「み、光姫さん!?」
身体が勝手に起き上がっていた。
これは理屈じゃない。
……あたしの本能。

