旦那様は社長 *②巻*

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「ねぇ、光姫さん」

「……え?」

「あたしの話、聞いてくれる?」


ゆっくりと身体を離しながら、真っ直ぐあたしの目を見つめて言う美海さん。

あたしの頬をつたう涙を優しく拭いながら。


「あたしの母もね、流産を経験したことがあるの」

「お母様が…?」

「ええ。その話を聞いた時、こんなこと言ってた──」



『流産するまで、普通に産まれてくるのが当たり前なんだって思ってた。だけど、当たり前なんてこと、この世に存在しないのよね……。
産まれてこられることは、きっともう奇跡なのよ。
だから美海が産まれた時、本当に嬉しかった。愛おしさが何倍にも感じられたの。
それにね?これは海斗が言ってくれた言葉なんだけど──』


美海さんのお父様である海斗さんの言葉が、まるであたしへのメッセージのように、傷ついた心にスーッと入り込んでくる。


『……美加。赤ん坊は、必ず何か使命を背負ってやってくるそうだ。
産まれてくることも、産まれてこないことも、全ては赤ん坊自身が選択している。
そう決めたことには、赤ん坊それぞれの強い願いが込められているんだよ』