「あたし……なくしちゃった……一番大切なもの……」
「光姫さん──ッ」
「なくしちゃったの。……あたしの命よりも……大切なもの……」
全てを悟った美海さんが、泣きながら頭を何度も振る。
不思議とあたしは冷静に、そんな美海さんの腕に静かに抱きしめられていた。
ああ……
あたしの代わりに泣いてくれる人がいる。
あたしを、美姫を思って泣いてくれる人がいる。
その優しく美しい涙が、あたしの渇いた心を少しずつ潤していく。
あたしは……
こうしてほしかったんだ。
悠河にも……。
一緒に泣いてほしかった。
抱きしめあって。
慰めあって。
たくさんのキスをして。
ただ慰められたかったわけじゃない。
あたしも悠河を、悠河の傷ついた心を、癒してあげたかった。
あたしを癒せるのが悠河だけのように、
傷ついた悠河を癒せるのもあたしだけだから。
だって、それが夫婦でしょう?
美姫を失った哀しみと。
悠河の心の痛みが手に取るように分かるのに、感情を押し殺させることしかできない自分の非力さに、涙が止まらなかった。

