「里海が風邪ひいて何も食べたくないって言った時に作ったのが始まりなの。普通の野菜スープだったら、野菜が固くて喉を通らないらしくて。それでこうしてちっちゃくサイコロみたいに刻んで、“コロコロスープよ”って持っていったら、喜んで食べたのよ、この子」
ポンと頭に手を置かれて、里海ちゃんは嬉しそうに笑った。
「可愛いでしょ?コロコロスープって」
「そうだね。ママ、優しいんだね」
「うん!里海ね、ママ大好きなの」
「そっか」
羨ましいくらい仲良しの親子。
美姫がお腹にいた時、悠河がぜったい女の子だって言うから、あたしもいつの間にかそう信じてた。
女の子が生まれたら、こんな風に育てたいなって漠然と思ってた。
その理想が目の前にある。
あたしの夢だった。
「ママが大好き」って美姫に言われたかった。
「光姫お姉ちゃん……やっぱり泣いてるよ?」
「……え?」
ハッとして頬に手をやると、本当に涙が溢れていた。
「里海、海音のとこにいてくれる?そろそろ起きるかもしれないから」
咄嗟に美海さんが機転を利かせると、里海ちゃんが「でも……」と心配そうにあたしを見る。
「大丈夫よ。光姫お姉ちゃんは今疲れてるから、また寝かせてあげよう?」
里海ちゃんは「ゆっくり休んでね」と言い残すと、静かに部屋を出ていった。
「光姫さん……」
振り返った美海さんに笑顔を見せる余裕は、もうどこにもない。

