旦那様は社長 *②巻*


「泣いてないよ?里海ちゃん、ずっとここにいてくれたの?」

「うん!!」

「そっか。ありがとう」


里海ちゃんは「えへへー」と可愛く笑った後、急に立ち上がった。


「あッ!忘れてた!!」

「え?」

「あのね、ママに言われたの。光姫お姉ちゃんが起きたら教えてって」


「ちょっと待ってて!」と言って、里海ちゃんは部屋を飛び出していく。


子供らしく表情がクルクル変わる里海ちゃんは、見ていて飽きない。

本当に可愛い……。

きっと自分の子供なら、その可愛さも倍なんだろうな……。


また美姫のことを考えてしまった。


実際に美姫を見たことなんてないのに、ハッキリ頭の中で顔が浮かんでくるのはどうしてだろう。

目元はあたしに似ていて……口元や顔の輪郭は悠河に似ていて……。


もう美姫には二度と会えないのに。


涙がこぼれ落ちそうになって、指で拭った。


もうすぐ美海さんと里海ちゃんが来るから、涙は見せられない。


ちょうどその時、パタパタという足音が近づいてくるのが聞こえた。

そして優しい美海さんの声。


「里海、転けないでよ?」

「はーい」