旦那様は社長 *②巻*


車が静かに走り出す。

だけど美海さんは何も言わなかった。


ただあたしに肩を寄せ、優しく包み込んでくれていた。


美海さんもとても温かい。

まるで悠河に包まれているみたいに安心する。


きっと2人とも、とても優しい心の持ち主だから。



「何も聞かないの?」


独り言のように呟くと、美海さんも囁くように答えた。


「無理に聞き出したりしないから安心して。だけど……」

「だけど?」


「あたしに話したいって思ったら、いつでも言って?ぜったい力になるから」

「美海さん……」


鼻の奥がツーンと痛くなってきた。

また涙が溢れてしまいそう。


「ずっと側にいるから。光姫さんがいいって言うまでずっと。……迷惑じゃなければ」


そう言ってほんの少し笑った。


迷惑なわけがない。

美海さんに会わなければ、あたしはあの後どうなっていたか分からない。


「……光姫さん、痩せた?」

「……」

「ちゃんとご飯、食べれてる?」


首をフルフルと左右に小さく振った。


「そう。でも何か食べた方が……」


もう一度首を振る。


「……分かったわ。まだもう少し家まで時間かかるから、眠って?」


まるで催眠術にでもかかったかのように、その言葉を最後に急に意識が遠のいた。