旦那様は社長 *②巻*


「じゃあ光姫。先生のとこに行ってくるな」

「うん」

「何かあったらすぐ呼べよ」

「大丈夫だよ」


悠河はポンポンとあたしの頭を叩きながら言った。


「大丈夫じゃないから言ってんだろ。まだ……何も食べれないんだな」


テーブルの上に残った朝食を見ながら、ため息を吐いた悠河。


「点滴してるから大丈夫だよ」

「バカ。自分で栄養とれればこんなもの必要ないんだ」


ピコンとあたしのおでこを指で弾く。


「じゃあ、また横になってろ」


あたしをベッドに寝かせると、頭をよしよしと撫でて背を向けた。

部屋を出ようとする悠河を呼び止める。


「悠河」

「ん?」


ゆっくり振り返った悠河に、

「ありがとう」

と言うと、少し驚いた顔をした後

「なんだよ今さら」

と照れたように笑った。


部屋を出ていった悠河の足音が遠ざかった時、もう一度告げた。


「ありがとう。悠河」


そしてあたしは少し身体をふらつかせながらも、点滴の針を抜いて起き上がり、急いで服を着替えた。


そして……


思い出がたくさん残るこの部屋を目に焼きつけて……


飛び出した。


あたしはここにいちゃいけない──…