「じゃあ光姫。先生のとこに行ってくるな」
「うん」
「何かあったらすぐ呼べよ」
「大丈夫だよ」
悠河はポンポンとあたしの頭を叩きながら言った。
「大丈夫じゃないから言ってんだろ。まだ……何も食べれないんだな」
テーブルの上に残った朝食を見ながら、ため息を吐いた悠河。
「点滴してるから大丈夫だよ」
「バカ。自分で栄養とれればこんなもの必要ないんだ」
ピコンとあたしのおでこを指で弾く。
「じゃあ、また横になってろ」
あたしをベッドに寝かせると、頭をよしよしと撫でて背を向けた。
部屋を出ようとする悠河を呼び止める。
「悠河」
「ん?」
ゆっくり振り返った悠河に、
「ありがとう」
と言うと、少し驚いた顔をした後
「なんだよ今さら」
と照れたように笑った。
部屋を出ていった悠河の足音が遠ざかった時、もう一度告げた。
「ありがとう。悠河」
そしてあたしは少し身体をふらつかせながらも、点滴の針を抜いて起き上がり、急いで服を着替えた。
そして……
思い出がたくさん残るこの部屋を目に焼きつけて……
飛び出した。
あたしはここにいちゃいけない──…

