旦那様は社長 *②巻*


それはもしかしたら、悠河が無意識にしていたことかもしれない。

だけど記憶がよみがえってきて辛かった。


まだ美姫がお腹で順調に育っていた頃、悠河はあたしよりぜったい先に眠らなかった。


今みたいにあたしのお腹を優しく撫でながら、

「光姫。美姫。おやすみ」

と言って、あたしが眠りにつくまでずっと撫で続けてくれていた。


お腹からあたしの全身に悠河の温かい体温が溶け込んで、なんだか悠河に全てを包み込んで守ってもらえているような気がして、いつも安心できたんだ。


変わらない優しい温もり。

だけど今は、その温もりがとても切なくて苦しい。


悠河はあたしの中の美姫の影をずっと探しているの?


もう泣かないと誓ったのに、涙が零れそうだった。


そんな時、悠河が電話をかけながら病室の外へ出ていった。

仕事の話をしていたから、電話の相手はきっと藤堂さんだ。


悠河は今、この病室で仕事をしている。


「会社に行っていいよ」

と言っても、

「今は光姫の側にいたいんだ」


そう言って、あたしの側を片時も離れようとしない。